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 BMW Motorcycle Owners Club 
車種別一覧(1923〜1955)
■車種別編集にあたり以下の文献より引用・参考にいたしました■
「MOTORCYCLIST 別冊」(主に1981年3月号〜5月号「BMW STORY特集) 八重洲出版 /「BMWモーターサイクル 風の軌跡」 ゲロルト・リングナウ著 ダイヤモンド社/「単車 BMW」 小関和夫著 池田書店/「アウトバーンの疾駆」 成美堂/「モーターサイクル 賛歌」 月刊ライダースクラブ/「アウトバーンの栄光 BMW」 成美堂/「BMWモーターサイクル史」 ブルース・プレストン著 グランプリ出版社/
 BMW R32 (1923-26)

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●R32 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比5 最高出力8.5ps/3,300rpm 最高時速95-100km ●変速機 手動3段 変速比@2.27 A1.5 B1.08  最終ギヤー比4.4(サイドカー用5.36) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量120kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント、リヤとも 26×3 ●価格 2,200マルク
 航空機エンジンの製造を目的として、1916年にドイツ人マックス・フリッツとカール・ラップの二人はBFW(バイエリッヒ航空機製作所)をミュンヘンに発足させる。17年社名をBMWBayerische Motoren Werke(バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ=バイエルン州の自動車工場)」とし、18年株式会社とする。青と白のBMWのエンブレムは、発足の地、バイエルン洲の洲旗・紋章が由来になっている。19年の第一次世界大戦の敗戦に伴うベルサイユ条約でドイツが航空機の製造を禁止されたため、航空機製造を断念し船舶やバイク用のエンジン等を製作した。そこで、BMWが活路を見出すべく、航空技師でもあるマックス・フリッツがフラットツイン+シャフトドライブの基本理念にて造った「BMW」ブランドの1号車が、あまりにも有名なR32である。その後の空冷エンジンに使用される「R」はドイツ語の車輪や自転車の意味である「RAD」の頭文字から取ったものと言われている。
 もちろん、このR32以前にもBMWではモーターサイクルを造っていたが、148ccの2サイクル単気筒モデルは「フリンク」、そして、486cc水平対向2気筒マシンには「ヘリオス」の車名が付けられていた。その「BMW」ブランドの第1号車R32は、1923年のパリモーターショーで発表された。ヘリオスの「ババリアの軽いエンジン」のニックネームをもつ、M2B15型エンジンをリファインし、縦置きにして、エンジン型式名をM2B32として用いた。クランク軸の方向を90度振られたこのR32のエンジンは、ヘリオスの6.5psから8.5ps/3,300rpmにパワーアップされたのが特徴だ。
 23〜26年に3,090台造られたR32だが、最初のいわばプロトタイプに近いマシンにはヘッドライトやホーンがなかったり、リヤのVブロック式ブレーキはプロトにも見られるが、フロントのディスクプレートのように見えるのは、スピードメーター用のプーリーである。それと、シリンダーヘッドのピストンチェック用プラグの形状が異なることを除けば、プロトも量産モデルも大差なかった。
マックス・フリッツ(1883-1966)
 BMWの創立者でもあり、マルティン・シュトッレとともに彼が実現させた水平対向(ボクサー)の2気筒エンジン、シャフトドライブは現在にいたるまで、BMWはこのコンセプトを守り続けてきている。
 彼はMC(モーターサイクル)嫌いと言われているが私(管理人・横浜の中島)はそう思わない。何故ならダイヤモンド社発行の「風の軌跡」によると、彼は時間の許すかぎり、自分の手によるMCを駆ってテストに出かけ、故郷シュトゥットガルトはもとよりイタリアまでも足を延ばしてると記してある。彼はMCを愛しそこに何かを感じたはずである、そうでなければ、現在まで愛されるMC造りは出来なかったのではないだろうか。
 BMW R37 (1925-26)
●R37 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比6.2 最高出力16ps/4,000rpm 最高時速115km ●変速機 手動3段 変速比@10.03 A6.64 B4.75  最終ギヤー比4.4(サイドカー用5.36) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量134kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント26×2.5、リヤ 26×3 ●価格 2,200マルク
 1924年になると、ドイツ航空機エンジン製造禁止令は、一部制限を残すも解除され、R32を設計したフリッツも航空部門へ戻った。そんな中で、BMW初のOHVレーシングモデルR37は、フリッツの片腕ともいわれ、ライダーとしての天分も兼ね備えたルドルフ・シュライヒャーの腕に委ねられた。シュライヒャーは当時としては優れた車体回りには、手を加えず、SVのM2B32エンジンをより高出力型のOHVに仕立て直した。R37の最大出力は16ps/4,000rpmと、約2倍近いパワーアップはインターナショナル・シックスデイズ・トライアル(ISDT)で金メダルを獲得するなどレースで大活躍をしてゆくが、BMWの中で量産されたモデルとしては、なぜか一番少ない174台で生産を打ち切られた
Rudolf Schleicher
 BMW R39(1925-26)
●R39 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル直立単気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量247cc 圧縮比最6.0 最高出力6.5ps/4,000rpm 最高時速100km ●変速機 手動3段 変速比@13.6 A9.3 B6.1  最終ギヤー比2.65 ●寸法 全長2.0505 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量110kg 燃料タンク容量 10リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロン27×3、 リヤ 27×2.5 ●価格 1,870マルク
BMW初の単気筒がこのR39で美しいスタイルを持つ。時代の要求で「ヘリオス」の2年後に、半分の250ccという排気量で造られたが、R39の性能はヘリオスを超えていた。後輪の駆動ははシャフトドライブであるが、単にコスト低減のためでなく、BMWポリシーの一端がうかがえる。R32の2,200マルクに対し、1,870マルクのR39は855台造られた。ブレーキはフロントに「ドラム」、リヤには「ミッションブレーキ」と呼ばれた、クランクケース出口のドライブシャフトを締め付ける外拡式。チェンジは、右側シリンダー横に位置する。ハンドチェンジ。左ステップボードのミッション横には、車載工具入れが設けられており、その上にはマグネトーがある。
 BMW R42 (1926-28)
●R42 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比4.9 最高出力12ps/3,400rpm 最高時速95km ●変速機 手動3段 変速比@11.0 A6.6 B4.7  最終ギヤー比4.5(サイドカー用6.3) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量126kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント26×3または26×2.5、リヤ 27×2.75または26×2.5 ●価格 1,510マルク
 ツーリングモデルR32の後継lモデルとして26年に発表されたのがR42(M43型エンジン)である。上下分割のクランクケース、その後方にボルトオンされたミッションケースなどはR32同様だが、新設されたアルミ合金製シリンダーヘッドよる燃焼室形状の検討など吸気系とともに加えられ、最高出力は12ps/3,400rpmへと大幅に向上している。リヤーブレーキはVブロック方式から、トランスミッションブレーキという、ミッションドライブシャフト後方に設けられたプーリー(ドラム)を締め付けるタイプにまた、スピードメーターワイヤーの取り出しもミッションに改められているが、車体回りのレイアウトはR32を踏襲している。ドイツ経済が復興したことや、価格もR32より大幅に安くなったこともあり、3年あまりで約7,000台あまりが生産される成功作となった。
 BMW R47 (1927-28)
●R47 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比最5.8 最高出力18ps/4,000rpm 最高時速110km ●変速機 手動3段 変速比@11.0 A7.04 B4.84  最終ギヤー比4.4(サイドカー用5.7) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量130kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロントCCI、 リヤ 27×3.5 ●価格 1,850マルク
  BMW初のスポーツモデルR37はなぜか短命に終わった。このR47は、その後継lモデルとして、27年にデピユーしたものだが、R37からの改良点は、ツーリングモデルR32→R42に採用されたものと同様だった.すなわち、エンジンベースはR37のままで、最高出力は同じ4,000rpmながら2psアップ18psにされ、リヤブレーキはそれまでの∨ベルト式から、R39同様のシャフトに取り付lナられた、プーリーキに締め付けるカルダン・シャフト式後輪ブレーキが採用された。またR47には、オプショナルパーツとして、ヘッドライト、ホーンなとが用意され、2年間で、R47は1,720台が造られた。
 BMW R52 (1928-29)
●R52 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク63×78mm 総排気量487cc 圧縮比最5.0 最高出力12ps/3,400rpm 最高時速100km ●変速機 手動3段 変速比@13.4 A7.4 B5.2 最終ギヤー比4.77 (サイドカー用@16.1 A8.9 B6.2/5.7) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量152kg 燃料タンク容量 12.5リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント19×3、 リヤ 26×3.5 ●価格 1,510マルク
 外観デザインこそ大きな変化はないものの、着々と改良は加えられていた。その一つが、従来グリス封入式だった3段ギヤボックスは今様のオイル潤滑システムとなり、ノイズの減少と耐久性向上が飛躍的に図られた、それまで燃料タンク右横に設けられていたチェンジゲートは、R52以降クランクケースに取り付けられ、チェンジレバーのストロークは短くされている。さらに、フロントブレーキは大径化された。BMWの第一号車R32依頼、ボア・ストロークは常に68mmのスクエアであったが、R52でそれを63×78mmのロングストロークとしている。これはBMW設計陣のツーリングモデルには太い、中速トルクを、スポーツモデルモデルにはハイパワーを、のポリシーの表れだった。
 BMW R62 (1928-29)
●R62 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク78×78mm 総排気量745cc 圧縮比最5.5 最高出力18ps/3,400rpm 最高時速115km ●変速機 手動3段 変速比@11.5 A6.34 B4.4 最終ギヤー比4.05 (サイドカー用@13.1 A7.4 B5.2/4.75) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量155kg 燃料タンク容量 12.5リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント19×3、 リヤ 26×3.25 ●価格 1,450マルク
 R52以降の新生フラットツインエンジンベースのBMW初のSV750cc。ボア・ストロークは78mmのスクエアで最高出力18psで115km/hでの巡航を可能にした。BMWは、当時4輪車生産に乗り出すため、てんわやんわの渦中にあった。クランクシャフト→カムシャフト→マグネトーの駆動は、全てギヤで行われていた。アルミ合金製シリンダーヘッドは、冷却面積を十分とるため、二重構造式になっていた。そして、イギリスのオースチン7のライセンス生産版であるBMW初の4輪車「デキシー」が1928年発表された。
Dixi 3/15(745cc)
 BMW R63 (1928-29)
●R63 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク83×68mm 総排気量734cc 圧縮比最6.2 最高出力24ps/4,000rpm 最高時速121km ●変速機 手動3段 変速比@11.5 A6.3 B4.4 最終ギヤー比4.05 (サイドカー用@13.4 A7.4 B5.2/4.75) ●寸法 全長2.10 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量155kg 燃料タンク容量 12.5リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント19×3、 リヤ 26×3.25 ●価格 1,750マルク
BMW初のスポーツモデル(OHV)の750cc(ナナハン)で最高出力も24ps/4,000でBMWとして初の20psをオーバーしている。R63はマシンの性格上83×63mmのショートストローク734ccエンジンが積まれていた。この、ボア・ストロークレシオ81.92をもつR63のパワーユニットが、いかにバランスよいものであったかは、これをベースにしたスーパーチャージャー付きレコードブレーカーにE・ヘンネが乗り、29年に、MC最高速度挑戦で216.8km/hの世界速度記録を打ち立てたことからも裏付けられる。
 BMW R11 (1929-34)
●R11 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク78×78mm 総排気量740cc 圧縮比最5.5 最高出力 18(20)ps/3,400rpm 最高時速100km ●変速機 手動3段 変速比@11.5 A6.3 B4.4 最終ギヤー比4.45 (サイドカー用@13.4 A7.4 B5.2/5.18) 寸法 全長2.10 全幅0.89 全高0.95(各m) 乾燥重量162kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2.5リットル タイヤサイズ フロントとリヤ 26×3.5 ●価格 1,630マルク
 年々高まる人気に答え、大量生産できるモデルを計画してゆく、従来は一台一台手造りに等しかったフロントフォークやタンク等を鋼板プレスした当時、「スターフレーム」と呼ばれ、アイゼナッハ工場で生産されたプレスフレームを最初に用いたモデル。プレスフレームのパイオニアはアメリカ人で4輪のダッヂやシトロエンなど多くのメーカーに採用された。R11は比較的安価なことと頑強さでウォール街の引き起こした大恐慌による世界的不景気にもかかわらず7,500台生産された。
 BMW R16 (1929-34)
●R16 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク83×68mm 総排気量730cc 圧縮比最6.5 最高出力25ps/4,000rpm 最高時速120km ●変速機 手動3段 変速比@2.83 A1.55 B1.08 最終ギヤー比4.45 (サイドカー用@13.4 A7.4 B5.2/5.18) 寸法 全長2.10 全幅0.89 全高0.95(各m) 乾燥重量165kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2.5リットル タイヤサイズ フロントとリヤ 26×3.25 ●価格 2,040マルク
 プレスフレーム初のスポーツモデルがR16。ツーリングモデルとしては、同年にSVエンジンのR11が登場している。このOHV730ccモデルR16は、32年にそれまでクランクケース上に設けられていたシングルキャブレターから長いマニホールドを有することなく、1932年からはフローター別体式のアマル式ツインキャブが採用され33ps/400rpmとパワーアップされる。
 BMW R2 (1931-36)
●R2 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル直立単気筒 OHV ボア・ストローク63×64mm 総排気量198cc 圧縮比最6.7 最高出力6ps/3,500rpm(8ps/4,500rpm) 最高時速95km ●変速機 手動3段 変速比@2.89 A1.7 B1.1  最終ギヤー比6.75 ●寸法 全長1.95 全幅0.85 全高0.95(各m) 乾燥重量110kg 燃料タンク容量 11リットル オイル容量1.5リットル タイヤサイズ フロント、 リヤとも 25×3 ●価格 975マルク
 1927年、フラットツィンR42の発売に加え、。OHVのスポーツモデル、R47の500ccラインが充実。販売利潤の少ないR39は27年で生産中止されたが、その後、景気が後退すると、2番手の単気筒として200ccに排気量をダウンして販売されたのがR2である。値段も安く、税金もかからず、免許不要で運転できることなどもあって、販売は好調だった。クランクシャフト→ミッション→シャフトの動力系を直線的にレイアウトするため、エンジンは右にオフセットされ、BMWとして初めて一体型クランクケースが採用された。リヤブレーキはカルダンブレーキは備えられず後輪ハブのドラムブレーキで、かかと操作。
 BMW R4 (1932-37)
●R4 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル直立単気筒 OHV ボア・ストローク78×84mm 総排気量398cc 圧縮比最5.7 最高出力12ps/3,500rpm(14ps/4,200rpm) 最高時速100km ●変速機 手動3段 変速比@2.9 A1.5B1.1  最終ギヤー比5.11(サイドカー5.63) ●寸法 全長1.98 全幅0.85 全高0.95(各m) 乾燥重量137kg 燃料タンク容量 121リットル オイル容量1.75リットル タイヤサイズ フロント、 リヤとも 265×3.50 ●価格 1,150マルク
 軍用を目的として開発された400ccOHVシングルはR2をベースに発展したモデルであり、軍も購入したが全く同じものが市販された。車重は200ccのR2より27kg増えたが、12馬力の400ccエンジンを搭載したR4は100km/hでの連続走行が可能だった。キックペダルはR2のクランクシャフトに対し直角に踏みおろす、フラットツィン同様のタイプから右側に移されクランクシャフトに対し、平行に踏み下げるメカに変わっている。R2にあったフットボードは今日的なステップに改められ、この辺りのレイアウトはむしろフラットツィンモデルより進んでいた。
 BMW R12 (1935-42)

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●R12 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク78×78mm 総排気量745cc 圧縮比最5.2 最高出力18ps/3,400rpm 最高時速 110km ●変速機 手動4段 変速比@3.18 A2.06 B1.42  C1.42  最終ギヤー比4.07(サイドカー用4.75) ●寸法 全長2,10 全幅0.90 全高0.94(各m) 乾燥重量185kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3×19、 リヤとも 3.5×19 ●価格 1,630マルク
 プレスフレームとサイドバルブエンジンのR12は前モデルR11(1929-34)と同じ18psと、出力には変更は無かったが、実はモーターサイクルの世界に画期的フロントサスペンション油圧減衰機構内蔵式テレスコピックフォークを備えた世界初の量産ツーリングモデルがR12とR17である。ダイレクト式に変更された手動変速機は4段ミッションになっていた。細かいところでは、リヤフェンダーがヒンジで上に上げられ、リヤタイヤの着脱をごく短時間で済ませられること、今まで燃料タンク上にあったスピードメーターが、ヘッドライトナセル上に移されたこと、そして、今日的な消音器が設けられたことなどであったR12は36,000台生産されたが多くがドイツ陸軍に供された。。
 BMW R17(1935-37)
●R17 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク83×68mm 総排気量736cc 圧縮比最6.5 最高出力33ps/5,000rpm 最高時速 140km ●変速機 手動4段 変速比@3.18 A2.06 B1.42  C1.42  最終ギヤー比4.07(サイドカー用4.75) ●寸法 全長2,10 全幅0.90 全高0.94(各m) 乾燥重量183kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2.5リットル タイヤサイズ フロント 3×19、 リヤ 3.5×19 ●価格 2,040マルク
 1935年、E・ヘンネの駆るレコードブレーカーは256.1km/hを記録していた。BMWのパワーは充分に立証されていた。BMWに必要とされたのは、足回りであった。同時に発表されたこのR17にもR12と同じテレスコピックフォークが採用された。スターフレームに搭載されたショートストロークのOHVエンジンはツィンキャブレター装備によって33ps/5,000rpmを発揮、当時最速モデルであったが、第二次世界大戦前の不景気という時代を反映してR12の36,000台に対し、価格が高いためか3年間でわずか434台しか生産されていない。
 BMW R5 (1936-37)
●R5 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比最6.7 最高出力24ps/5,800rpm 最高時速140km ●変速機 4段リターン 変速比@3,6 A2,28 B1,7 C1.3  最終ギヤー比3.89(サイドカー用4.62) ●寸法 全長2.13 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量165kg 燃料タンク容量 15リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3×19、リヤ 3.5×19 ●価格 1,550マルク
 戦争の気運は徐々に高まっていたが、それを鼓舞するかのように、E・ヘンネのスピード記録は更新されていった。28年に発表された、R63エンジンぺースの彼のスーパーチャージャー付きマシンは、29年の216.8km/hからスタートし、35年に256.1km/hになっていた。1936年10月、フライングエッグと呼ばれた彼のレコードブレーカーは、フランクフルト→タームシュタッド間のアウトバーン上で、己れの記録を15.9km/hも上回る272.0km/hを記録したが、そのエンジンぺ−スR63ではなく、ワンピースのクランクケースをもつR5のエンジンがベースであった。 エンジン型式254/lと名付けられたR5のエンジンは、最もよく回るエンジンとして、当時絶賛された。OHVでありながら、パルプまわりの慣性質量低減のためカムシャフトは2本用いられ(ツインカム)、短く軽いプッシュロッドを備えていた。このR5からプレスフレームは空力と剛性アップのため楕円をテーパー状にしたパイプフレームとなった。フロントフォークストロークも、それまでの88mmから100mmに伸ばされ、4段の足動変速機(フットチェンジ)をもっていた。これに伴いフットボードも廃止され、R4のようなフットベグになり、ステアリングダンパーも備えていた。ライダーの熱い支持を受け大戦直前のわずか2年間で26,000台が市販された。
エルンスト・ヘンネ(1905-2005)の駆った「フライングエッグ」、35年のレコード256.1km/hは間もなく、フェルニホフの乗る1,000ccVツィンに、たった1km/hで破られ、そのフェルニホフのレコードも、6ヶ月後にはジレラ500に乗るタルフィによる僅差で破られた。ヘンネは二人の争いが一件落着とみるや、フランクフルト→ミュンヘン間のアウトバーンで、自己記録272km/hを上回る279.83km/hを1937年に出しあっさりと更新してしまった。この記録は1951年まで破られることは無かった。流線型ヘルメットの形からも分かるように、空気の力を利用して走ることなどは航空機メーカーBMW以外は誰も考えつかなかった。
 BMW R6(1937)
●R6 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 SV ボア・ストローク70×78mm 総排気量596cc 圧縮比最6.0 最高出力18ps/4,800rpm 最高時速125km(サイドカー95km) ●変速機 4段リターン 変速比@3,6 A2,28 B1,7 C1.3  最終ギヤー比3.89(サイドカー用4.62) ●寸法 全長2.13 全幅0.80 全高0.95(各m) 乾燥重量175kg 燃料タンク容量 15リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3×19、リヤ 3.5×19 ●価格 1,375マルク
SVフラットツインR6は、R12を改良し同性能ながらフレーム関係はR5と全く同じで600ccとなっていた。これがBMW初の600ccモデルである。R6はBMWとしては初のエアークリーナーをミッションケースの上にレイアウトしたモデルでもある。
 BMW R51(1938-40)
●R51 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比最6.7 最高出力24ps/5,600rpm 最高時速135-140km(サイドカー105-110km) ●変速機 4段リターン 変速比@3,6 A2,28 B1,7 C1.3  最終ギヤー比3.89(サイドカー用4.62) ●寸法 全長2.13 全幅0.815 全高0.96(各m) 乾燥重量182kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3×19、リヤ 3.5×19 ●価格 1,595マルク
 戦前最後の500ccツイン。レースで得たノウハウを量産車にフィードバックがBMWレース出場のポリシーであることは、R51に初めて採用されたプランジャー・リヤサスも36年にBMWレーサーに備えられたものの流用であることからもわかる。エンジンベースはR5だが、前後サス付きの近代的レイアウトとったのがR51である。同時にユニバーサルジョイントも設けられた。

BMW 500 Kompressor 1939
最初にレースに出場したBMWはR37であったが、さらに、グランプリレース用に新型500ccを用意していた。シリンダー部分に改良が加えられ、二つのカムシャフト(DOHC)を持ち、過給機(スーパーチャージャー)が付け加えれた。38年には世界選手権のタイトルを手中にしたが、39年にはマン島TTレースで1,2位と勝利したものの、ヨーロッパ選手権ではジレーラ4気筒に敗れ去ってしまった。BMW車はイタリアのオートバイに出力でひけをとらなかったが、安定性の面で問題があった。→詳しくはこちら
 BMW R75 (1941-44)
●R75 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク78×78mm 総排気量745cc 圧縮比最5.6-5.8 最高出力 26ps/4,000rpm 最高時速 95km ●変速機 10段リターン 前進用変速比@3.22(4.36) A1.83(2.54) B1.21(1.67) C0.90(1.24)  後退用変速比 2.41(3.30) ( )内ラフロード用  ●寸法 全長2.40 全幅1.73 全高1.00(各m) 乾燥重量420kg 燃料タンク容量 24リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3×169、リヤ 4.5×16 ●価格 -----
 第二次世界大戦が始まり、市販車の生産は41年、一切中止された。BMWの軍用MClま、それまでのR2、あるいはR4、R12の市販車が流用されていたが、ドイツ軍は、それら既存モデルでは満足せず、占領地の調査、メッセンジャー、他車のエスコート用のMC開発を、BMWに依頼。これに対するBMWの応えが、10段変速機を備えた、軍用サイドカーR75である。
 ポア・ストローク78mmスクェアの745ccO H Vエンジンは、戦中下の粗悪燃料でも十分に性能を発揮できるよう、圧縮比は5.6−5.8と低く、最高出力も26ps/4.000rpmにすぎないが、トルクは5kgm/3,600rpmと強大でサイドカー(ドイツ陸軍規格のシュタイプ製)を付けることを前提として与えられたものだ。メンテナンス面もマグネトーは箱型、キックペダルも前後方向に踏めるようにして扱いやすくしている。さらにR75の走破性向上を助けるため、変速機はオンロード用の前進4段と、ラフロード用の4段。さらにリバースの2段という10段ミッションを備え、最終ギアケース横には、サイドカーのホイールを駆動する、デフアレンシヤルも備える、凝った駆動系(2WD方式)をもっていた.フレームはバックポーンを中心にする、7パートがすべてボルトオンタイプ。実戦でのメインテナンスの簡略化が図られている。16インチホイールと同等の高さに引き上げられたサイレンサーは、燃料タンク上に設けられたエアークリーナーとともに、水深50cmでもR75が走れることを物語り、仕様によりソ連戦線用とサハラ戦線用があった。重量420kgのR75をフル装備すると、実際には800kgにも達し、止めるためのブレーキは油圧式でカー側も連動している。R75は16,000台から18,000台ほど生産されたが、敗戦国の軍用車であることもあって、極めて現存数は少ない。
↓第二次世界大戦(1939〜1945)後モデル
 BMW R24 (1948-50)
●R24 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル直立単気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量247cc 圧縮比最6.75 最高出 12ps/5,600rpm 最高時速 95km ●変速機 4段リターン 変速比@6.1 A3.0 B2.04 C1.54  最終ギヤ比4.18 ●寸法 全長2.02 全幅0.75 全高0.71(各m) 乾燥重量130kg 燃料タンク容量 12リットル オイル容量1.5リットル タイヤサイズ フロント 2..50×19、リヤ 3.00×19 ●価格 1,750マルク
戦後ドイツはMC生産を禁止されていたが48年に解かれ、原始的な設備のもとに造られたモデルが、R23をベースにした戦後初のBMWがR24である。いわば250cc以下のモデルを造れるとなって、新設計されたシリンダー/ヘッドまわり以外はR23に酷似している。細部は、4段ミッションをもち、自動進角装置などを備え、シャフトドライブのダンパーには、R23のラバーカップリングから、メカニカルダンパーにおきかえられていた。
 BMW R25 (1950-51)
●R25 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル直立単気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量245cc 圧縮比最6.5 最高出 12ps/5,600rpm 最高時速 95km(サイドカー80km) ●変速機 4段リターン 変速比@6.1 A3.0 B2.04 C1.54  最終ギヤ比4.5(サイドカー5.2) ●寸法 全長2.02 全幅0.75 全高0.71(各m) 乾燥重量140kg 燃料タンク容量 12リットル オイル容量1.25リットル タイヤサイズ フロント 3.00×19、リヤ 3.25×19 ●価格 1,750マルク
R24のエンジンに手直しを加え、プランジャー式のリヤサスを持つ、溶接式ダブルクレードルフレームに積んだモデルが、23,400台が作られたR25である。エンジン関係では、R24よりも大きなインテークバルブを備えていたが、出力は同一だった。スポークもツィンモデル同様、ストレートエンドタイプが採用され、強度面を向上させていた。R25に小改良が加えられR25/2(1951-53)が38,651台販売され、諸元で異なっているのは車重が2kg重い142kgになった
 BMW R51/2(1950-51)
●R51/2 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比最6.3 最高出力24ps/5,800rpm 最高時速140km(サイドカー105-110km) ●変速機 4段リターン 変速比@3,6 A2,28 B1,7 C1.3  最終ギヤー比3.89(サイドカー用4.62) ●寸法 全長2.13 全幅0.815 全高0.72(各m) 乾燥重量185kg 燃料タンク容量 14リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3×19、リヤ 3.5×19 ●価格 2,750マルク
 1948年に250cc以下のMC製造禁止が解かれ、その後伝統的なフラットツインにまで枠は拡大された。そんないきさつから、50年に戦後初のフラットツインR51/2が生まれたが、38年に発表されたR51をベースにしていた。2分割式のシリンダーヘッドカバーとセミダウンドキャブレターを備えていた。基本レイアウトはカムシャフトを2本もつことなど、R51と同じだ。わが国でも戦後このR51/2から輸入が始まった
 BMW R51/3(1951-54)

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●R51/3 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量494cc 圧縮比最6.3 最高出 24ps/5,800rpm 最高時速 140km(サイドカー105-110km) ●変速機 4段リターン 変速比@4.6 A2.28 B1.7 C1.3  最終ギヤ比3.89(サイドカー4.57) ●寸法 全長2.13 全幅0.79 全高0.72(各m) 乾燥重量190kg 燃料タンク容量 17リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3.00×19、リヤ 3.50×19 ●価格 3,000マルク
 51シリーズの最終モデルがR51/3であるが、/3はR51の延長線上のものでなく、全く別物に仕上げられていた。名残として、手動でのギヤチェンジもできるように、シフトレバーがミッションケース右側に設けられていた。ボア・ストローク68mmスクエアのデメンションこそ同一だが、カムシャフトは1本になり、駆動はクランシャフトからのギヤ。チェーンを一切使わない戦後型のエンジンの典型を生み出したモデルでもある。
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BMW RS54 Rennsport 1954
過給機(スーパーチャージャー)付レーサーが禁止された後、BMW 500はまったく新しいエンジンを搭載した。高速用サーキットでは、その性能を発揮しスロットルを全開にして走ることができたのである。しかし、完成の域に達したとはいえなかった。まだ、オートバイの安定性の問題は残っていたのだ。このエンジンをサイドカーに搭載すると、すばらしい性能と安定性を発揮し、サイドカーレースでは負け知らずであった。BMW社はサイドカーレースへと向き始め、58年には二輪車のレースから撤退してしまったのである。→詳しくこちら
 BMW R67 (1951)
●R67 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク72×73mm 総排気量590cc 圧縮比最5.6 最高出 26ps/5,500rpm 最高時速 145km(サイドカー110km) ●変速機 4段リターン 変速比@3.6 A2.28 B1.7 C1.3  最終ギヤ比3.36 (サイドカー4.38) ●寸法 全長2.13 全幅0.79 全高0.72(各m) 乾燥重量190kg 燃料タンク容量 17リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 3.00×19、リヤ 3.50×19 ●価格 2,875マルク
サイドカーを引くため、低速トルクの向上が狙われたモデルがR67である。エンジンレイアウトはR51/3と同一であるが、ロングストロークの600ccエンジンを積んでいる。R67は爆撃で破壊されたアウトバーン修理班に足として使われ「エンゼル・オブ・ザ・ロード」の愛称をもっていたように、ほとんどがサイドカーつきで販売された。
 BMW R68(1952-54)
●R68 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル水平対向2気筒 OHV ボア・ストローク72×73mm 総排気量590cc 圧縮比最7.5 最高出 35ps/7,000rpm 最高時速 160km ●変速機 4段リターン 変速比@4.0 A2.28 B1.7 C1.3  最終ギヤ比3.89(サイドカー4.57) ●寸法 全長2.15 全幅0.79 全高0.725(各m) 乾燥重量193kg 燃料タンク容量 17リットル オイル容量2リットル タイヤサイズ フロント 2.15×19、リヤ 3.50×19 ●価格 3,950マルク
 BMWの高品質なイメージに、さらに、「高性能」のインパクトを与えるために造られたのが、BMW量産車初のスポーツ仕様160km/h(時速100マイル)マシンR68である。その性能に見合った制動力を確保するため、やはり初採用の2リーディングブレーキが装着された。ボア・ストロークがR67/2と同一のR68は、67/2が5,600rpmで28馬力発生したのに対し、35ps/7,000rpmという性能で、サイドカーを取り付けるのにも理想的だった。フロントに21インチ、アンダーガード、アップエキゾーストのISDT(5日間行われるトライアル)モデルも供給された→こちら
 BMW R25/3(1953-56)
●R25 主要諸元●エンジン 空冷4サイクル直立単気筒 OHV ボア・ストローク68×68mm 総排気量245cc 圧縮比最7.0 最高出 13ps/5,800rpm 最高時速 119km(サイドカー88km) ●変速機 4段リターン 変速比@6.1 A3.0 B2.04 C1.54  最終ギヤ比4.16(サイドカー4.8) ●寸法 全長2.065 全幅0.76 全高0.73(各m) 乾燥重量150kg 燃料タンク容量 12リットル オイル容量1.25リットル タイヤサイズ フロント 3.00×18、リヤ 3.25×18 ●価格2,060マルク
 R25シリーズの頂点を極めたモデルが/3で、高品質感を出すアルミリム、フルワイズハブが設けられ、長いストロークをもつフロントフォークには、シングルモデル初のオイルダンパーが備えられ、リアサスペンションにプランジャーサスが採用された。R25/3の特徴はの一つには、タンク前方下からキャブレターまで全長70cmに及ぶエアー吸入通路だ。脈動効果を発揮し、トルクの向上につながった。しかし、BMW社は2輪、4輪合わせての売り上げ不振は続き、市場は新しいMCを求めていた。それらのニーズに対する答えが、1955年に発表された、一連のアールズフォーク付きマシンだった。
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